ラピッドプロトタイピングでドールを自作してみました

POSTED BY DANNY CHOO On 水 2013/02/06 13:54 JST in ドール

皆さんも周知の通り、僕はドールが大好き!あまりにもドールが好きだったのでずっと以前からうちのマスコットキャラをドール化したいという願いがありました。実際に幾つかのメーカーに打診してみましたが、興味を持ってくれるところはなかったのでうちのTシャツのラインアップと同様に自分で作ってみました ^^;

という訳で今まで開発中だったうちのマスコットキャラ末永みらいドールのお披露目です!初めてにしては可愛く仕上がったのではないかと ^^;

今日はラピッドプロトタイピングについていろいろとシェアします。ドールだって我ら個人でも作れる日がやってきましたね^o^

どういう訳かは分かりませんが、韓国にはたくさんのBJD(球体間接人形)メーカーがあったので去年は様々なドール製作方法について学ぶ為、現地に行ってSQLabsを始めとしたメーカーを幾つか訪問しました。手作業による伝統的な造型ではなく、CADを用いてドール製作するというヒントは実はこの旅を通して得ました。韓国のドールを製作している企業の多くではCAD(Computer Aided Design)が使われています。

ドールのモデルは日本人イラストレーターの唯々月たすく先生に描いて頂いたイラスト。僕としてはアイプリントよりレジン製やアクリル製のアイの方が好みなので、アイはイラストの目の部分を切り取ってレジンを流し込みました。

そして彼女の全体像はこんな感じ!顔は可愛いと自分が思いますが、ドール製作は今回が初めてなので出来としては他のドール会社の足元にも及ばないレベルです><
材料の特性(膨張、収縮、強度、etc)、破壊点、摩擦力の計算等、学ばなければいけない事は山程ありますが、グーグル先生は何時でも相談に乗ってくれるので、試行錯誤しながら徐々に改善していきます。

手作業で造型をするとなると一年近くは掛かる上、修正の必要が出てくれば悲惨な状況になってたかもしれないので全て3Dでやる事に。全体を数%だけ縮小または拡大する修正作業など想像をしただけでゾッとします。

今回体の造型に使用したソフトのZBrushは映画、ゲームやアニメ制作等でも使われています。造型や今回肝となるスタイルが良いドールボディの制作にはうってつけです。
下記動画ではトロンやアバターでどの様に使われていたかが分かります。

体の造型が完成したら切り出し作業に移行。

全パーツの切り出しが終わったらパーツ一つ一つが関節で繋がるよう調整していきます。おっぱいはみらいサイズにしました ^^;

その後はデータを3D Maxにインポートして様々な修正を加え、全パーツがちゃんとはまり、動くかどうかを確認。

製作は僕とうちのアートディレクター二人でやっていました。

ヘッドの造形は殆どは僕らが作ったモーフターゲットシステムを使って生成しています。 上の写真では両目、頬、口を形成する5つのターゲットにテクスチャマッピングを加えてテスト表示しています。ターゲットを手動、または数値入力する事でヘッドの見た目を変更できます。

モーフターゲットはこんな感じに使っています。左端のヘッドはアイホールを極端に大きくしてみたサンプルです ^^;
これからは新規のヘッドを作りたい場合、数値を変更すれば3D Maxが処理してくれるので、造型作業は必要無し!

本来人間の顔は左右非対称なので自分の顔写真を撮り、写真の片面を鏡のように反対側に映し出すと全くの別人に見えてきます。もしくは火星人に見える!これはドールにも同じ事が言えて、コンピューターで生成されたドールの多くに違和感を感じるのはこのせいです。3Dでヘッドを造型する場合、殆どのケースでは片面だけ作り、それを反対側に反転するという手法が使われています。

僕らのシステムはヘッドを人間のように意図的に左右非対称にするようプログラムされています。手作業で造型されたヘッドは自然と左右非対称になりますが、普通にコンピューターでやる場合はそうはいかないので、3Dでヘッドを製作しようと思っている方は注意!

皆さんもヘッドが作れるようシステムの無料配布を検討していますが、3D Maxはべらぼうに高いのでこれを買わずに利用できる方法を現在考え中。このシステムさえあれば後はデータを出力し、ヤスリにかけ、塗装してメイクを施せば完成です!皆さんもご自分のオリジナルヘッドが簡単に作れる日は近い!

顔はドールの命。ドールオーナーの80%はドールの顔の出来次第でお迎えをするかしないかを判断しているそうです。

顔は最重要なので滑らかに仕上がるよう、表面にはこれでもかと言う程のポリゴンを使用。

手は再造型の手間を省く為に骨組みから作りました。骨組みを動かして少し調整すれば即プリントアウト可能。

Netfabbでデータの出力の準備。大きさは出力機の種類によりますが、全てのパーツは一定の範囲内に収まらなくてはいけません。

出力形式はSTLファイル。STLはSTereoLithographyの略で、ラピッドプロトタイピングやCAMで広く使われています。

僕らがパーツの出力に使っているのはEnvisiontec Ultraのラピッドプロトタイピングマシン。技術解説は下記動画にて。

次の動画では実際どのようにパーツが出力されているかが詳しく紹介されています。

手パーツについている突起は支柱と呼ばれています。
3Dプリンターでは先ずDLP(Digital Light Processing)プロジェクターが3Dモデルの一部を受け取りプレートが組み込まれた液体レジンのプールに照射していきます。照射された部分は硬化し、プレートは0.2mmずつ液体レジンの中に沈み、パーツの形が完成するまでこのプロセスが繰り返されます。
形にもよりますが、モデルはプレートの上で成形されるので重みを支える為に支柱が作られます。詳しくはWikipediaの光造形法の項目をチェック。

仕上がりはとても滑らかですが、赤ちゃんの肌のようなスベスベ感ではなく、近くに寄ると親指が階段状になっているのが見て取れると思います。Envisiontecを始めとした多くの3D出力機を作る会社は加工は殆ど必要無いと主張していますが、これら写真を見る限りそうでもないみたいですね。
とはいえ、レジンは簡単にヤスリにかける事が出来、扱い易いので特に文句は言えませんね ^^;

支柱は手で簡単に取り除く事が出来ます。残りはニッパーで切ったり、紙やすりをかける必要があります。

これがふくらはぎのパーツ。支柱はパーツの大きさと重さに比例してデカくなります。

腕を仮組み。

不必要なレジンはモデルのコストを無駄に嵩張らせるだけで意味がないので、大きいパーツをプリントする際はなるべく中身が空洞になるように設計しています。これを「肉抜き」と言います。これは3D MaxのBoolean Subtractコマンドで簡単に出来ます。やり方は下記動画を参照下さい。

胴体部分とその支柱…

支柱を手で取り除いたら次は残りの部分をニッパーで切り取り、紙ヤスリをかけます。

支柱は普段出力を請け負った業者がつけてくれます。3Dプリンターの多くは海外で開発されたものですが、この検索結果のご覧の通り日本国内にも3Dプリントサービスを提供している業者もたくさんいます。
殆どの場所では値段もちゃんと教えてくれて、今回僕が注文したパーツの印刷代およそ100000円。

海外もチェックしてみましたが、殆どの業者は「価格についてはお問い合わせ下さい」を掲げるだけで値段は提示していませんでした。

胴体の中の支柱は想像以上に太かったです。

支柱は取り除く際にあちこちに飛び散るのでご注意を。

ビキニ姿での見栄えが良くなるようにおっぱいは胴体の分割線を隠すようにデザインしました。この手の関節はよりダイナミックなポージングが可能になります。

そしてこれがみらいちゃんのヘッド。ほんの少し紙ヤスリにかける必要がありますね。

いい感じになってきました ^o^

次はパーツを全部くっ付けてはまるか確認。

違うバストサイズが欲しくなったらZBrushでモデルを作り、STLフォーマットに変更して印刷するだけです。

お座りポーズ。ドールデザインはいかに可動性と美しさを両立させられるかが課題です。皆さんはどちらを重要視しますか?
ドールで一番重要な要素は何ですか?

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一旦分解して紙ヤスリにかけてプライマー処理をします。

散らかった机周り ><

そしてヤスリを掛け、プライマー処理を施し、スプレー缶で塗装したみらいはこんな感じ。ヤスリ掛けが怪しい部分もあるので表面が少々ポツポツしています ><
アイは友人にイラストを元にレジンから作って頂き、メイクは別の友人にやって頂きました。

みらいちゃんにウィグを付けるとこんな感じになります。近日写真をもっと撮ってアップしますね!

この記事では他のラピッドプロトタイピング方法を紹介しています。ところで、これは番組の収録で作ってもらったので、ナルシストではありません^^;

そして3D繋がりという事で僕の3D Max過去作品も掘り起こしてみました。上の写真は僕がモデリング、影、照明、反射の基礎を学んだ後初めてレンダリングした画像です。今見てみると恥ずかしい出来ですが、初めはみんなこんなものです ^^;

当時は大学で日本語と韓国語を勉強していたのでパソコンは学術的に学ぶ事は出来ませんでしたが、幸い検索エンジンを通してネットから3D Maxを勉強する事ができました ^o^

3D Maxを弄る機会は結構多く、徐々にスキルアップしました。

これは僕が作った戦闘機のうちの一つで、搭載された四つのエンジンは深宇宙の航行を可能にしています。上の画像は流体モードで星雲からの謎の爆発から逃れようとして、途中でエンジンが一つ炸裂するというシーンを再現したものです ^^;

この機体は「V-Clone」といい、グラディウスシリーズに登場するビックバイパーを元に作りました。宇宙船はビックバイパーが一番好きでしたね。

この頃になると爆発のレンダリング技術が少しマシになっています。見ての通り、僕は「戦闘機が何らかの爆発から逃れようとしてエンジンを破損させる」というテーマが結構好きだったりします ^^;

スケール感は特に気にしていませんでした ^^;

V Cloneがあまりにも好きだったのでこれに乗ってイギリスへ帰国する事も。

この機体はV Cloneが通過する光のトンネルにちなんで「slipstream」と名付けました。攻略にはやたらと時間が掛かりましたが、思い通りに進めた時の達成感は今でも鮮明に覚えていますね。あの時は確か天気の良い土曜の朝で、妻が昼ご飯が出来たとリビングに呼んでくれてた記憶が ^^;

昔は3D作品はこのサイトにアップしていて、サイト内のUIも僕が3Dでレンダリングしたものです。このサイトをきっかけにジョブドラゴンで働くようになり、それがアマゾンのウェブサイトマネージャーの仕事へと繋がりました。3D Maxを学び、出来た作品をネットでシェアしていなかったら今とは大分違う人生を歩んでいた筈です。

そんな事もあったので、僕からはなるべく自由時間をネットでの習い事に費やし、ネット上で作品を公開する事を勧めています。新しい友達が出来たり、道が開く事だってあります!

当時は3D Maxで作ったモデルのデータを公開していたのでみらいちゃんのドールのデータも公開しようかなと思っています ^o^

他のサムネは僕と妻を映画風に合成した安っぽい写真ですが、フォトショップのコツを掴むのには良い練習でした。

このサイトで使われているUIも僕が3Dレンダリングした作品です。ただ、コンテンツは次第に増え、このレイアウトもスケーラブルではなくなりました ><

僕がこの記事で伝えたかったのは、ネットを使えば簡単に新しいスキルを身に付ける事が出来るので、所属している職業や学校に関わらず、誰もがチャレンジするべきです!
新しい知識を身に付け、それを他の人達と共有すれば必ず新しい道が開きます。

この記事では3Dデザイン、ラピッドプロトタイピングや使えるツールを紹介したので、今度は皆さんが才能を発揮して世界に変革をもたらす作品を作ってみてはどうでしょう?他人に頼らず、自らの手で作ってみましょう!

資金が必要でしたらキックスターターで募金を募るか、或はレストランのウェイターをやって僕みたいに資金作りをするという手もあります。

そしてこの写真でも後頭部に怪しいヤスリ掛けの跡が ><
さっきも触れましたが、僕はドール開発に関しては素人ですが、彼女の関節やその他の部分を改善し続けるべく日々勉強しています。
現段階までの開発期間は4ヶ月と割と短期間でプロジェクトを進める事が出来、これも何もテクノロジーとうちのアートディレクターのおかげです ^o^

情熱という材料も忘れてはいけません。人は何かに情熱を持ち、それをなくてはならないものと認識すれば、それを実現させるからです。
たとえ周りから期待されなくても自分に信念があれば必ず上手くいきます。

みらいちゃんドールの進展は随時報告します!僕が参加する次のアニメイベントでお披露目できればと思っています ^o^

更新です!出力した3Dパーツで金型作っちゃいました^^; 続きを読む>>>