これ迄の記事でも触れて来たように、3Dプリンターは僕のライフプロジェクトである末永みらいスマートドールの製作に置いて極めて重要な役割を担っています。
今回は新しくGETしたFormlabs製のForm1 3Dプリンターのレビュー、及び自作ドールの製作にこのプリンターがどう関わっていくのかを紹介していきます。
同製品のキックスタータープロジェクトを支援したのは2012年10月頃で、正直に言うとプリンターは一生届かないものだと思っていました。注文から一年経過してもプリンターが発送される様子は一向になく、Formlabsからの返答は「近々発送されます」のみ。そのうち返信すら届かなくなりました。このメールは2013年12月頃に送料390 USDの支払いを済ませた後に届いたメールで、本文には「Ships Immediately (直ちに発送されます)」とはっきり明記されていました。
Formlabsはお詫びにレジンの割引購入券も送ってくれましたが、今回購入したプリンターには使えないタイプというオチ付きでした。飲めとでも言うのですかね ^^;
Form1が実際に手元に届いたのはその一年後。デカい箱に梱包されていて輸入税はなんと3万円でした。
出力用データはAutocad Inventor、SolidWorks、Maya、3ds MaxやZBrush等といった様々な3Dソフトで作成。データは完成後、STL形式(STereoLithography)でエクスポートし、PreFormというForm1用(MacとWindows対応)のソフトウェアで開きます。
手の下の灰色の構造物は支柱と呼ばれていて、ソフトウェアが出力物に合わせて生成してくれます。
Form1プリンター付属品のForm Finish Kitです。
光造形では非常に精密な部品が出力できますが、後処理も必要であり、出力物はこのキットを用いてビルドプラットフォームから剥がし、洗浄します。
ビルドプラットフォームはPost-Print stepsに記載されている通り、Form1から取り外し、Form Finish Kitの上に乗せます。
今度は電鋳と呼ばれる手法で型を作っていきます。
このワックスパーツは「マンドレル」と呼ばれていて、各パーツに銅線を巻き、黒鉛の塗布をスプレーして導電性を持たせます。
そしてこれが出来あがった最終製品。この金型からは約1万回程劣化無しでソフビを引き抜く事が可能です。
鋳造と電気めっき工程では収縮が起こるので、3Dパーツは実物より5 - 6%大きく出力する必要があります。
実物と同サイズでパーツを出力した場合、金型から出てくる手は5 - 6%小さくなってしまいYou Wa Shockで泣く事に...。
収縮はあらゆる鋳造/型に起こる現象なので、素材ごとの収縮率を把握しておくのは大事です。
東東京の工場にて3D出力>鋳造>電気めっき工程を経て製造されたボディパーツ全種。以前投稿したあなたもメーカーになれる理由。大量生産への道の記事ではこの工程についてより詳しく書いたので、気になったらチェック。
...次第に傷だらけに。3D出力物は容易にビルドプラットフォームから剥がす事が出来ないので、表面が一定以上傷ついたら新しく買い換えないといけないのかもしれませんね。ちなみにこのビルドプラットフォームは偶然にも別売りされている模様。
時折、出力が失敗しますがその原因は様々。一つは出力後のレジンタンクの洗い忘れ。レジンタンクの底には硬化したレジンがよく溜まるので洗浄必須です。
考えられるもう一つの理由はビルドプラットフォームの不十分な洗浄ですが、実際これが出力に影響を及ぼしているかどうかは確認できていません。3D出力は何時失敗するか分からないので、何時でもキャンセルできるよう出力状況を見張っておく事をオススメします。そのままにしておくとレーザーがタンクに照射し続け、訳の分からない物体が出来上がってしまう事も。
また、レジンタンクの底にはシリコンの層があり、硬化したシリコンを取り除く際はこれを極力傷つけないよう注意を払う必要があります。
3Dプリンターの他の選択肢として、資金的に余裕があればDigital Wax Systemsはかなり良いチョイスですね。
上の写真はグッドスマイルカンパニーのオフィスで撮った古いモデルですが、5000 USDあればゴムも出力できる最新モデルのXFab laser printerも手に入ります。
コンシューマー向けのMakerbot Replicator 2は熱溶解積層法という方式で作品を出力してくれます。資金が限られていて、表面の仕上げにそこまで拘りが無い場合はこういった3Dプリンターが勧められます。
Makerbot Replicator 2の本体価格は2208 USDで、材料は1キロ当たり43USD ~ 130USD。下記動画では同製品が稼動している様子が伺えます。
現在の世界の3Dプリンター市場のシェア率は日本が0.3%、アメリカが70%、ドイツが17%、そして中国が3%と推移していて、話によれば日本経済産業省(僕が委員を務めているCIICの主催元)は補助金を出す等して日本のシェア率を高める対策に乗り出しているそうです。上の写真のOpen Cube製SCOOVO 3Dプリンターがこの援助を受けているかは分かりませんが。
Form1の本体価格は3299 USDでレジンの材料費は1リットル当たり149 USD。送料は日本宛で390 USD。更に輸入税で300 USD掛かったのでトータルコストは4130 USDでした。
Form1はそれなりのコストが掛かりますが、鋳造と電気めっきに必要なディテールを作る事ができ、スマートドールのボディパーツや小さなアクセサリーの開発にも活用できます。
ただ、スマートドール用の家具や乗り物の開発となるとSCOOVOやMakerbot等と言った熱溶解積層法式のプリンターの方が費用効果が高くなってきます。
Form1は卓上に置いても見栄えの良い洗練されたデザインで、オフィス内のMac製品と良く合うマット仕上げの銀色の表面が特に気に入っています。おまけにカバーはみらいちゃんのテーマカラーのオレンジ色 ^^;
本プリンターの購入を検討している方には忠告ですが、Form1は高コストに加え、対応が微妙なカスタマーサービスも考慮する必要があります。サービスの悪さは商品の発送で特に目立ちました。これまで返信が無かったメールは多数あり、あっても事務的な返事しか返って来ませんでした。
Formlabsの今後の課題は先ず目安を設定して、守れない約束は作らない事ですね。長い沈黙や「現在発送中です」というメールを何度も貰うより、「一年後に発送されます」という知らせがあった方がまだマシでした。
Form1のヘルプセンターも質問の答え方が曖昧で、これがレジンの話題になると特に顕著。プリンター利用者にわざとレジン、レジンタンクやビルドプラットフォームを余計に買わせる為に曖昧な返答をしているのではないかという印象を受けました。
PreFormで支柱の作成位置を調整出来ないという点にも不信感を感じました。PreFormでは他の3D出力ソフトが指定しないような箇所に支柱を作成するので、これはなるべくレジンの消費量を増やし、利用者により多くのレジンを買わせる為に仕掛けた仕様なのではないかと邪推してしまいました。材料はFormlabs製のレジンしか使えないので尚更です。
とは言え、グーグル先生さえいればForm1のカスタマーサポートに頼る必要はありません。高品質な商品と劣悪なカスタマーサービス、劣悪な商品と高いカスタマーサービスの二択だったら僕は前者を選ぶので今回は結果オーライ、という前向きな考え方をする事にしました ^^;
ところで、皆さんの中で3Dプリンターの購入を検討している方はいます?学校、または職場で3Dプリンターが使えるという方はいます?
ミライフレーム用の射出成形の金型は今のところこんな感じ。請求書には1600万円の表示が ><
アマゾンとマイクロソフトで働いていた頃に貯めていた貯金が残っていて助かりました。
完成品はこんな感じ!ランナー(別名ゲート)及びパーツはメカキットファン向けにキットとして別売りもする予定です ^^;
その他のスマートドールの製作関連の記事は下記一覧からご覧になれます。